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コラム

地震や津波にどう備える?家庭用シェルターを活用した防災対策

気象庁の統計によると、2011―2020年の10年間に発生した震度1以上の地震は3413回。その前の10年間(2001―2010年)の1720回と比べ倍増しています。また1927年(昭和2年)から1995年(平成7年)の68年間に100人以上の死者・行方不明者を出した大津波が9回も発生しています。日本では今後も地震・津波発生による被害は避けられず、国は市区町村の防災対策はもとより家庭での防災対策も推奨しています。

ここでは「緊急地震速報」と「津波警報」の違い、国が推奨している家庭での地震・津波対策、近年導入が増加している「家庭用地震・津波シェルター」の種類などを解説します。

緊急地震速報とは

緊急地震速報とは、最大震度5弱以上の地震発生が予想される地域の住民、交通機関、工場などが必要な防災措置を取れるよう、気象庁が発表する地震情報のことです。2007年10月1日から運用されています。

震源近くの地震計が観測した地震波を同庁で震源地、地震の規模(マグニチュード)、震度(揺れの強さ)などを自動的に計算し、その結果を地震発生予想地域のテレビ・ラジオ、市区町村の防災行政無線などを通じて一斉通報する仕組みです。

緊急地震速報は厳密には「警報」と「予報」の2種類に分かれており、それぞれの発表条件と情報内容は次の通りです。

緊急地震速報(警報)

  • 発表条件

・地震波が2点以上の地震観測点で観測され、最大震度が5弱以上との計算結果が出た場合

  • 情報内容

・地震の発生時刻・場所の推定値と地震発生場所の震央地名

・震度5弱以上および震度4が予想される「地震予報区」(全国を約200区に分けた地域名)

緊急地震速報(予報)

  • 発表条件

・いずれかの地震観測点においてP波またはS波の振幅が100ガル以上となった場合

・地震計が観測した地震波を解析した結果、その規模がマグニチュード3.5以上または最大震度が3以上と予測される場合

  • 情報内容

・地震の発生時刻・場所・規模の推定値

・予測最大震度が3以下の時はその最大予測震度

・予測最大震度が4以上の時はその予測震度・揺れが予想される地震予報区名・当該予報区への揺れ到達時刻の予測値

津波警報とは

津波警報とは、気象庁が全国を66区に分けた「津波予報区」に対して発出する津波警戒情報のことです。

津波警報は次の3種類と発表基準に分かれています。

  • 大津波警報……津波の高さが3mを超えると予想される場合
  • 津波警報………予想される津波の高さが1m以上3m以下と想定される場合
  • 津波注意報……津波の高さが0.2m以上1m以下であって、津波による災害のおそれがあると予想される場合

また津波警報を発出した津波予報区に対して同庁は次の情報を提供します。

  • 津波到達予想時刻・津波の高さ予想
  • 当該予報区における主な地点ごとの満潮時刻・津波到達予想時刻
  • 当該予報区の沿岸で観測した津波の時刻・高さおよび沖合の観測値から推定される津波沿岸到達時刻と高さ

国が推奨する地震対策と家庭用地震シェルター

緊急地震速報が発表された場合や、実際に震度5以上の地震が発生した場合、国が推奨している個人の地震対策は次の通りです。

(1)地震に対する備え

  • 非常用の飲料水・食品を備蓄する
  • 非常持ち出し袋を常備する
  • 家具を固定する
  • 宅内に「安全スペース」(家具や電気製品を置いていない場所)を作る
  • 地元自治体主催の地震防災訓練に参加する

(2)地震が発生した際の行動

  • 自宅にいる時……安全スペースに避難する、テーブルの下に隠れる、直ちに玄関扉を開けて避難路を確保する
  • 屋外にいる時……ブロック塀や自動販売機の傍から離れる、看板や割れガラスの落下に注意しながら建物から離れる
  • エレベータに乗っている時……最寄りの階にエレベータを停止させて降りる
  • 鉄道やバスに乗っている時……吊革や手すりにつかまる

しかし問題は、就寝中に発生する夜中の地震対策です。

震度5弱以上の揺れで停電した場合、室内も家の周囲も真っ暗闇。枕元に懐中電灯を常備していても、避難行動は著しく制約されます。

そこで近年増加しているのが、「家庭用地震シェルター」の導入です。

家庭用地震シェルターの種類

家庭用地震シェルターは、

  • 建物の耐震補強に比べ工事費が安く工期が短い
  • 住みながらの工事が可能なので仮住まいへの引っ越しや家賃が不要

などのメリットがあり、これが導入増加の背景と見られています。また家庭用地震シェルターは、様々なタイプを防災製品ベンダが開発して防災対策市場に供給しているので、選択肢が多いのも需要増加要因になっているようです。

家庭用地震シェルターは基本的に「ベッド型」と「部屋型」の2種類に分かれ、部屋型のバリエーションとして「テーブル型」、「押入れ型」、「クローゼット型」なども開発されています。

ベッド型

普段使っているベッドを金属フレームや頑丈な木材の枠で囲むタイプです。

夜中の地震発生に対し、無防備な熟睡中の身の安全を守れるのが特徴と言えます。また半日程度設置工事が完了するのも特徴です。

部屋型

自宅にいる時、家族が一緒に過ごす時間が長いリビングルームなどの床、壁、天井を鉄骨や木造軸組工法の木質パネルで補強し、部屋全体をシェルターにするタイプです。

建物全体の耐震補強より工事費が安い部分的な耐震補強とも言え、就寝中の地震発生時も短時間で避難できるメリットがあります。

国が推奨する津波対策と家庭用津波シェルター

気象庁が津波警報を発出した場合や実際に津波が発生した場合、国が推奨している個人の避難行動は次の通りです。

  •  津波発生時の避難経路・避難場所を確認しておく
  •  非常持ち出し袋を常備しておく
  •  家族同士の安否確認や緊急連絡を取るため、災害伝言ダイヤル・災害伝言板の利用法を確認しておく
  •  津波が発生した際は沿岸部や川沿いにいる人は直ちに高台、津波避難ビル、津波避難道路などへ避難する。海水浴をしている人は直ちに海水浴を中止して海岸から離れる
  •  津波からの避難は地域の自治会や町内会のルールに従う

しかし問題は、

  • 時速30―40kmとオリンピックの短距離選手並みのスピードで押し寄せてくる津波よりも速く、普通の人が高台・津波避難ビル・津波避難道路へ逃げ込めるのか
  • 高齢者、傷病者、身体障碍者などが押し寄せてくる津波を前に、重い非常持ち出し袋を背負って津波避難所へ移動できるのか
  • 建物や橋脚の倒壊、道路の陥没、土砂崩れ、火災などの発生で避難経路が閉鎖状態になっている場合、どこへ避難するのか

などです。

この問題解決策として近年導入が増加しているのが家庭用津波シェルターと言えます。

家庭用津波シェルターの種類

津波シェルターの導入が増加しているのは、在宅中に津波が押し寄せてきても、自宅に津波シェルターがあれば健常者はもちろん、高齢者・傷病者、身体障碍者も着の身着のままで、短時間で安全な場所へ移動できる利便性への認識の高まりが背景と言われています。

従来の家庭用津波シェルターは「救命艇型」や「自動膨張救命いかだ型」の、水上に浮かび津波の流れに乗って漂流する「浮体式」が一般でした。ところが浮体式の場合、津波と共に時速30―40kmで漂流中に、同じく漂流中の木造家屋やバス・トラックに衝突すると、乗用車が同速度で走行中に建物の壁・バス・トラックに衝突した時と同レベルの衝撃を受け、シェルター内で負傷する恐れがあります。

この危険性を防ぐため、新たに需要が増加しているのが「屋上設置型」と言われています。屋上設置型は、東日本大震災の大津波でも流されなかった鉄筋コンクリート造り住宅の屋上に設置する津波シェルターです。4畳半ほどの広さがあり、屋内階段を上がった先の天井と一体となっているシェルター出入口と屋上出入り口の扉は、船舶の水密扉と同一仕様になっているので、屋上が津波で水没しても海水侵入の心配はありません。また大人4人が約8時間、楽に呼吸できる酸素量があり、酸素ボンベを備蓄しておけばシェルター避難時間の延長も可能です。

この他、水密扉を装備した地中埋設式の円筒形シェルターも開発されており、見学者が絶えないと言われています。

まとめ

地震対策も津波対策も、現状では十分と言い切れない方が多いです。また平均3―5分とも言われる超短時間の余裕しかない地震・津波において、立地によっては避難の際に危険が伴う可能性もあります。ご自身がお住まいの地域の状況を今一度見直し、必要な備えを洗い出すことをおすすめします。

いずれにしても地震・津波対策としての家庭用シェルターの重要性は高まっていると言えそうです。

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