これから起こりうる核の脅威や自然災害から守る為に

コラム

核シェルターとは?基本の構造、世界の核シェルター事情を解説

ロシアのウクライナ侵攻、隣国北朝鮮の核爆弾開発と弾道ミサイル発射実験の加速など緊迫してきた国際情勢を背景に、日本でもクローズアップされているのが「核シェルター」です。

ここでは核シェルターの基本として要件や構造、設置するメリットやデメリットを解説する他、核シェルター普及率が高い諸外国の2022年時点における状況も紹介します。

核シェルターとは

核シェルターとは、他国からの核爆弾攻撃から自国民の安全を守るために設置した避難施設のことです。

ひと口に核シェルターと言っても様々な種類があり、国際的にオーソライズされた定義はありません。しかし基本的に次の4要件クリアが前提です。

2週間の避難生活ができること

他国から核爆弾攻撃を受けた際の残留放射線量は、7時間ごとに10%ずつ減衰するとされています。したがって核シェルターに2週間退避していれば残留放射線量が0.001%に減衰し、放射線被曝の影響がほぼなくなるとされています。

NBCフィルターが設置されていること

核シェルターにはN(核兵器)、B(生物兵器)、C(化学兵器)の3兵器から大気中にばらまかれた放射性物質や有毒ガスを吸着し、浄化された大気のみをシェルター内に供給できる空気清浄機が不可欠です。

ベッドとトイレがあること

避難中の心身の疲労を和らげるベッドとトイレ設備が不可欠です。

飲料水・食料を備蓄できること

2週間分の飲料水・食糧の備蓄が不可欠です。加えてカセットコンロ、照明器具、バッテリー、トイレ、着替えの肌着・衣服なども必需品になります。

民間核シェルターの構造と設備

核シェルターには国や自治体が公費で設置する大規模な「公共核シェルター」と、個人が自費で設置する小規模な「民間核シェルター」があります。

民間核シェルターの構造は、基本的に次の4タイプに大別されます。ここではそれぞれの構造と、主な設備を紹介します。

エアコンタイプ

自宅の一室を転用する最も簡易な構造の核シェルターです。

床・天井・壁・ドアに耐震・耐火強化を施した部屋にNBCフィルターを装着したエアコンを設置、大気中の放射性物質や有毒ガスを除去すると共に、室内の空気圧を高め室内の気密性を高める仕組みになっています。避難中は宅内のトイレを使えないので、簡易トイレの設置が必要です。

カプセルタイプ

庭の片隅に設置できるカプセルホテル構造の核シェルターです。基本は小型となります。

耐震・耐火仕様の鋼鉄製カプセル内にNBCフィルター装着のエアコン、一家族4人分のベッド、簡易トイレ、備蓄用の飲料水・食料を一式にしてあるのが特徴と言えます。

コンクリートボックスタイプ

地上設置、地下埋設の両方に対応できる鉄筋コンクリート構造の箱型核シェルターです。

シェルターの広さは収容人数によって加減でき、ベッド、ソファ、水洗トイレ、飲料水・食料備蓄用収納、ニュース・娯楽番組視聴用モニターなどを設備しており、最低2週間は避難生活ができる仕様になっています。

地下埋設タイプ

他国からの核兵器攻撃を想定した鋼鉄製の本格的な核シェルターです。シェルターは鉄筋コンクリートで覆われており、形状は円筒型が大半です。

一般的な核爆弾の爆発範囲は半径2~3.5kmです。このタイプは地下5~6mの深さに埋設するので、この半径の外側なら近距離着弾でも爆風や熱線を遮り、2週間以上の避難生活が可能とされています。

シェルターの広さは収容人数により加減でき、設備はコンクリートボックスタイプとほぼ同様です。

地下埋設型核シェルターのメリット・デメリット

4タイプある核シェルターのうち、最も安全度が高いのが地下埋設型核シェルターです。しかしこのタイプも次のメリットとデメリットがあります。

メリット

  • 放射性物質、有毒ガス、細菌のほとんどを遮断できる……地下埋設タイプの大半は円筒構造の鋼鉄製シェルターの周りを鉛とコンクリートで覆って埋設するので、ガンマ線の透過を約0.001%に遮断できます。また高性能のNBCフィルターを装備しているので、放射性物質、有毒ガス、細菌のほとんどを遮断可能。また核爆弾攻撃だけでなく、放射線漏洩事故や自然災害が発生した時のシェルターにもなります
  • オーダーメイドが可能……特注で依頼できるため、収容人数に合わせた設備にある程度カスタマイズが可能です。

デメリット

  • 設置は地質に左右される……立地の地質が軟弱、掘削すると地下水が溢れ出るなどの場合は、核シェルター水没の危険性が高いので設置が不可能となります。

世界の核シェルター事情

海外の核シェルターの大半は地下埋設タイプで、収容人数が数千人規模の公共シェルターから小規模な民間シェルターまで、様々なシェルターが混在しています。このうち普及率が高い国の状況は次の通りです。

なお普及率の数値は日本核シェルター協会の資料によります。

普及率100%のスイス核シェルター状況

スイスでは、約30万基の民間核シェルターが全国の居住用住宅、商業施設、事業所、病院などの地下に設置され、全国約5100カ所の公共施設の地下にも公共核シェルターが設置されています。これにより人口当たりの核シェルター普及率が100%に達しています。

この高普及率の背景が、居住用住宅、商業施設、事業所などの別を問わずすべての新築建物に核シェルター設置を義務付けた1963年施行の改正連邦法にあります。同法施行以降、スイスでは地下に核シェルターがない建物の新築が不許可になり、この核シェルター設置の新築建物が積もり積もって、現在の普及率100%になりました。

またスイスでは、2012年の改正連邦法により居住用住宅を新築する場合の民間核シェルター設置義務が廃止されました。一方で居住用住宅に核シェルター設置しない場合は、自治体に1500スイスランを納め、最寄りの公共核シェルターに居住人数分のスペースを確保することが義務付けられました。スイスはこれにより国の財政負担を軽減する形で、核シェルター普及率100%維持を可能にしています

スイスで一般的な民間核シェルターの場合、普段はワインや美術品の収納庫、非常用飲料水・食料備蓄庫、日常的に使わない家具・備品の「蔵」として使われています。この他、DIY用の工房、音楽スタジオ、トレーニングルームとして活用されているシェルターもあります。

ワインや美術品の収納庫、非常用飲料水・食料備蓄庫などとして使用している民間シェルターに対して、スイス政府は収容人数が数ヵ月間生活できる分の飲料水・食料と燃料の備蓄をガイドラインとして示しています。さらに備蓄食料としてフリーズドライパン・食肉・ソーセージ、缶詰、チーズ、チョコレートなどを推奨しています。

また非常用飲料水・食料を備蓄している民間核シェルターに対しては定期的に検査員が訪問して、飲料水・食料の衛生管理状態をチェック。賞味期限が近付いた飲料水・食料は早急に日常の食生活の中で消費し、衛生上懸念のある飲料水・食料は直ちに廃棄するよう指導しています。

一方、公共シェルターの場合も、普段は地下駐車場や地下倉庫として利用されています。しかし排泄物を微生物により分解・処理するバイオトイレ、数百人分の組立式簡易ベッド、NBCフィルターなどは定期的に点検・保守を行い、有事は即座に核シェルターとして機能できる態勢を整えています。

普及率100%のイスラエル核シェルター状況

イスラエルでは、建国3年後の1951年に施行された民間防衛法で、全国の居住用住宅、商業施設、事業所、病院、公共施設のすべての地下に核シェルターの設置と維持・管理が義務付けられました。

イスラエルの核シェルターは様々なタイプが混在しているのが特徴です。具体的には有事にすぐさま核シェルターに転用できる地下駐車場、数千人を収容できる公共施設地下の核シェルター、ユダヤ教教会の地下に設けた核シェルター、校舎全体を防爆窓付き鉄筋コンクリートで覆った「校舎核シェルター」、集合住宅や居住用住宅の地下に設けた「住宅核シェルター」などです。

また公共シェルターの中には商店、スポーツ施設、娯楽施設、多目的ホールなどを併設したものもあります。

普及率82%の米国核シェルター状況

米国(アメリカ)では、1965年までにワシントンDCだけで約20万カ所の商業施設、事業所、病院、公共施設などの地下に公共核シェルターが設置されました。その後も全米各地で核シェルター設置が推進された結果、現在の普及率82%に達したのです。

米国の公共核シェルターの中には食品スーパー、劇場等の娯楽施設、ジム・プールのスポーツ施設などを併設したシェルターもあります。

また米国では、民間核シェルターは富裕層向けを中心に進んでいます。富裕層を対象にした民間核シェルターは、地下のシェルター内で数年間生活できる飲料水・食料、燃料などを備蓄し、健康的に過ごすための娯楽・スポーツ設備が装備されていることが多いです。特に以下の特徴を備えているタイプが好まれる傾向にあります。

  • 高地に設置……洪水などの自然災害を避けるためダムや河川から数km以上離れた標高1000m前後の高地の地下に設置されている。また地滑りなどで万が一水没しても、シェルター内に浸水しない構造になっている
  • 軍事施設から数十km以上離れた立地に設置……有事の際は真っ先に他国からの攻撃対象となる軍事施設から数十km以上離れた立地の地下に設置されている
  • シェルターの外側は鉄筋コンクリートで被覆……爆心地から10km離れた場所で20メガトン級の原爆・水爆の爆風・熱線に耐えられるよう、鋼鉄製のシェルターが鉄筋コンクリートで包んだ状態で地下に埋設されている
  • 飲料水は深々度の地下水……飲料水は設置スペースを取り、かつ賞味期限があるミネラルウォーターのペットボトルを何千本と保管するのではなく、深々度を流れている地下水を組み上げて浄化、それをステンレス製のタンクに貯水して使う仕組みになっている
  • 警備員が常駐……核シェルターは一定数以上が散在した私有地に設置されており、警備員が敷地内のシェルターを定期的に巡回・点検している。そして有事の際は警備員がNBCフィルターを装着した4輪駆動ワゴン車で半径700km以内にいるシェルター保有者と家族を迎えに行く

普及率67%の英国核シェルター状況

英国(イギリス)では、全国15カ所に地下埋設の公共核シェルターがあり、いずれも収容人数が8000人規模の巨大シェルターです。

また全国15カ所のうち8カ所のシェルターがロンドン市内の地下鉄駅に付設されており、さらに各シェルターは防護措置を施した専用トンネルで繋がり、互いに往来できるように設計されているのが特徴です。

日本における核シェルターの特徴

自然災害が多く発生する日本では、身近な避難場所をキープすることが被害抑制のポイントになる可能性があります。ここでは日本で設置可能な、家庭用の核シェルター「レインボー72R」を例に特徴を紹介します。

室内設置型シェルター「レインボー72R」の特徴

とても性能が高く、いざという時に安定して稼働できる家庭用シェルターとなります。有毒物質(放射性物質/VXガス/サリン等)を99.995%遮断するため、避難時にも安心です。

  • 特許取得の吸気口……特殊フィルターの内部にゴミやホコリや異物等の付着を防ぎ、クリーンな環境を保持するための吸気口に関する特許を取得しています。
  • コンパクトなエアコン型……コンパクトな外観のため、部屋の外観を損ねません。小型でありながら高い機能を実現しています。

関連ページ:核シェルター レインボー72Rの紹介

まとめ

日本の核シェルター普及率はまだまだ低いです。その理由としてスイスやイスラエルのような設置義務がない、大陸とは海を隔てた島国なので他国との戦争に巻き込まれる現実感がない、核シェルターに対する国民全般の認知度が低いなどが挙げられています。ところがロシアのウクライナ侵攻、北朝鮮の核開発・弾道ミサイル発射実験、中華人民共和国の覇権主義と領海侵犯など現実を前に、日本人全般のこれまでの認識が変わりつつあります。
いつ発生するか分からない脅威への備えとして、また自然災害大国と言われる日本の自然災害発生への備えとして、日本でもようやく核シェルター設置の重要性が高まってきたようです。

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