これから起こりうる核の脅威や自然災害から守る為に

コラム

核シェルターと防災シェルターの違いは?それぞれの避難目的を解説

核シェルターと防災シェルターは混同されることも多いです。これはJアラート発令による武力攻撃事態下で、市区町村が国民保護法に基づき指定している避難所と、大規模自然災害発生時の避難所として市区町村が指定している施設の大半が同一であるのが要因と言われます。またメーカーの各種紹介資料の中には、両者を区別せずに説明しているケースが少なくないことも背景にあります。

ですが厳密には、核シェルターと防災シェルターは別物です。ここでは両者の根本的な違いとそれぞれの避難目的を解説します。

核シェルターとは

核シェルターとは、核弾頭ミサイル攻撃の核弾頭炸裂により残留放射性物質に汚染された大気から身を守るために避難できる施設のことです。施設により、避難が可能な人数や日数などは異なります。

関連ページ:核シェルターとは?基本の構造、世界の核シェルター事情を解説

核シェルターの要件

核シェルターに学術的定義、国際規格、デファクトスタンダードなどはありません。しかし基本的に次の要件を備えた施設が「核シェルター」と、国際的に共通認識される傾向にあります。

最低2週間の避難生活ができる

核弾頭炸裂により爆心地から飛散するガンマ線は、7時間ごとに10%ずつ減衰するとされています。すなわち、以下の計算になります。

  • 7時間後……10分の1
  • 49時間後(2日後)……100分の1
  • 343時間後(2週間後)……1000分の1

したがって核シェルターに2週間避難していればガンマ線は0.001%に減衰し、放射線被曝がほぼ無害なレベルまで低下するとされています。これが「核弾頭ミサイルの攻撃を受けたら核シェルターに最低2週間」の根拠と言われています。

また核シェルターは、シェルター本体を鉛混入のコンクリートで包み込んで地中に埋設し、さらにシェルター外部のコンクリート天井厚40cm以上、その上に60cm以上の土盛りをすれば、核弾頭炸裂のガンマ線・爆風・熱線からシェルター内を守れると言われています。

NBCフィルター装備の空気清浄機が装備されている

核シェルターにはN(ニュークリアː放射性物質)、B(バイオː細菌)、C(ケミカルː毒ガス)などに汚染された外気を吸着し、浄化された大気のみをシェル内に供給できる空気清浄機が不可欠です

ベッドとトイレがある

2週間以上の避難が必要なので、ベッドとトイレは不可欠設備です。

水・食料の備蓄できる

最低2週間分の水・食料の備蓄が不可欠です。飲料水+生活用水となる水の備蓄は1日一人当たり4ℓが目安です。したがって1日4ℓ×避難人数×避難日数分が必要になります。加えてカセットコンロ、照明器具、バッテリー・室内発電機、燃料、トイレ、着替えの肌着・衣服、毛布、医薬品と医療用品を詰め合わせた救急箱なども必需品になります。

防災シェルターとは

防災シェルターとは、大規模自然災害発災時に避難できる施設のことです。「災害シェルター」とも呼ばれます。基本は「発災から3日間避難するための施設」と言われます。このため核シェルターのような要件はなく、核シェルターほどの頑丈さは求められません。

関連ページ:災害シェルターとは?種類や価格必要な理由を解説

大規模自然災害発災時の避難先と言うと、従来は市区町村指定の小中学校の体育館、公民館などに開設される臨時避難所でした。ですが市区町村の避難勧告や避難指示に従い、自宅から避難所へ移動する途中に被災するケースが後を絶ちません。また大規模避難所でのトラブルも多く報告されています。

近年はこの危険を避けるため、個人設置の「民間防災シェルター」のニーズが高まっていると言われています。このシェルターは災害救助隊の救出を待つ間の「自家避難所」になる場合もあります。

防災シェルターの種類

防災シェルターは地震、津波・洪水、火山灰、竜巻など災害の性質ごとに対応したシェルターが各国で開発されてきました。日本の個人向け防災シェルターの場合は、頻発の度合から次の2種類が大半となります。

地震防災シェルター

自宅建物内1階の一室に設置するシェルターです。M7以上の大規模地震、それが原因で発生する土砂崩れなどで建物が倒壊しても、シェルター自体は破損せず、避難者の安全を保つ耐衝撃性を備えています。

津波・洪水防災シェルター

駐車場や庭の片隅に設置するシェルターです。津波・洪水の衝撃では壊れない強度はもとより、津波・洪水に混じって押し寄せる家屋の残骸、自動車などの衝撃にも耐えられる強度を備えています。また津波・洪水が押し寄せた場合は水面に浮上し、激流や残骸衝突の衝撃を受け流す仕組みになっています。

核シェルターと防災シェルターの違い

核シェルターと防災シェルターは設備・機能面で似通った部分がありますが、根本的に目的が異なります。目的の違いは以下で詳しくします。

また核シェルターの場合は「最低2週間避難」が前提、防災シェルターの場合は「最低3日間避難」が前提という、避難期間の違いもあげられます。

これらの違いにより、基本は核シェルターのほうが、防災シェルターよりも頑丈に作られている傾向もあります。よって製品によっては「防災シェルターも兼ねられる核シェルター」も存在します。ただし例外もあるため、導入前に各製品の詳細を確認することをおすすめします。

核シェルターに避難する目的

鉛とコンクリートで覆われ、地下に埋設された頑丈な核シェルターとは言え、核弾頭ミサイルの直撃に耐えられるものではありません。したがって核シェルターに避難する目的は別のところにあります。

例えば、太平洋戦争末期の米軍の無差別爆撃により広島の市街地に投下された原爆の場合、炸裂直後の爆風と熱線で死亡した被害者は約5万人と言われています。ところがそれから4か月後に、約10万人が相次いで死亡したと言われています。その原因が大気中に漂っていた残留放射性物質による被爆でした。

残留放射性物質は風に流され、爆心地から半径100―3000kmもの広範囲の大気中に漂い、それに触れた人の体内に蓄積されてゆくと言われています。したがって「核弾頭ミサイル攻撃の最大の脅威は残留放射性物質であり、これとの接触を防ぐ」のが核シェルターに避難する本来の目的と言われています。

防災シェルターに避難する目的

民間防災シェルターに避難する目的は、「72時間の壁(黄金の72時間とも)」と呼ばれる3日間の安全を確保するところにあります。大規模な地震・津波・洪水に襲われても3日間を安全に過ごせば、4日目以降も無傷・健康な状態で救助隊の救出を待つことができる傾向にあるとされています。

このため民間防災シェルターには最低3日分、余裕を見て1週間分の次の備蓄がほしいところです。

  • 飲料水+生活用水ː1日4ℓ×避難人数×3―7日分
  • 食料ːレトルト食品、フリーズドライ、インスタントラーメンなど
  • カセットコンロ
  • 紙皿・紙コップ、割箸
  • 簡易トイレと消臭・抗菌凝固剤入りトイレキットː排泄物はそのままゴミとして処分できる
  • ホイッスルː救助隊員に自分たちの避難場所を知らせるために必要
  • 全身清拭用ウエットタオルː入浴・シャワー浴の代替品
  • ドライシャンプーː髪を洗わなくても髪と頭皮のニオイや汚れを除去できる
  • 毛布ː睡眠中の体が温めるために必要
  • バッテリー・室内発電機ː照明、テレビ・ラジオ視聴などの電源
  • 救急箱
  • 手袋・スリッパ
  • 着替え用肌着

まとめ

民間核シェルターと民間防災シェルターは、避難目的も機能・装備も基本的に異なります。よって購入する場合は、この違いを十分認識して選ぶ必要があります。

なお「大は小を兼ねる」とばかりに防災シェルター兼用のつもりで核シェルターを購入した場合、地中埋設型の本格的シェルター以外は津波・洪水に襲われた時に浸水の可能性があります。

どちらを選ぶ際でも、核シェルターも防災シェルターも高台、低地、沿岸部、河川流域部、周辺施設の状況、起きうる災害の種類など、自宅の立地条件を十分調査してから選ぶと良いでしょう。

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